完全復活! LaLiga第29節 レアルマドリードvsバルセロナ マッチレビュー
こんにちは、くれたです。今回は待ちに待ったマドリー戦、クラシコのマッチレビューです。ムバッペ、メッシ、ネイマール率いるパリ相手にCLで大逆転で勝利し、勢いに乗るマドリー対ELでガラタサライ相手になんとか勝利し、得点を量産しているバルさというかなり熱い構図に。
前半戦クラシコとスーペルコパでのクラシコのレビューも貼っておくので、こちらもぜひ。
スタメン
マドリー
なんといっても目立つのは今シーズン絶好調であるベンゼマの不在。メッシがいなくなったリーガの得点ランキングではぶっちぎりで独走中。フィニッシャーだけではなく、アシストもできる正に超万能型の9番。その穴を埋めるべく採用されたのがモドリッチの0トップ起用。これまで見たこともなかったこの采配が試合にどのような影響を与えるかが注目だ。
また、ベンゼマと同じく不在の左SBのメンディの代わりにナチョが起用。バックラインのどこでもできる選手がバルサにもほしいなぁ。
バルサ
直近のガラタサライ戦でデストが負傷し、「アウベスでヴィニシウスを抑えられるのか?」というモヤモヤっとした不安がクレの間で囁かれるなか、右SBとして抜擢されたのはなんとアラウホ。本職はCBであり、対人能力は世界トップクラスではあるが足元にやや難があるアラウホの起用。これはこれで不安である。
残りのメンバーはおそらく現時点でのベストメンバー。デヨングとぺドリの位置が左右で逆なことぐらいがいつもと違う点であった。
両チーム嚙み合わせ
アンチェロッティの決定的なミス
絶対的エース、ベンゼマの不在によってアンチェロッティはクラシコの勝敗を決めたと言っても過言ではない程のミスを犯してしまった。
アンチェロッティは守備時にバルサの2CBに対してクロースとモドリッチの同数をぶつけたが、ブスケツへのパスコースのケアをそこまで徹底してはいなかった。ヴィニシウスはアラウホへのマークも気にしながら、デヨングのことも気にしないといけないという確実に2択を迫られる状況に陥ってしまったのだ。カゼミーロはブスケツをケアすることが多く、ライン間がかなり広がる状況が多く見られた。CBのアラバがデヨングを掴めようとするシーンも見られたが、広いライン間のせいでデヨングへの距離が遠く、この時点でチームとしてデヨングへのマークに誰が行くのかが曖昧になり、デヨングにフリーでボールを渡してしまうようになる。中盤の選手がフリーになろうもんならCBのピケとエリックガルシアが縦パスをバスバス刺すことができるのだ。こういう地味なプレーでもピケとエリックガルシアの技術の高さが伺えた。
デヨングがフリーになると、言わずもがな右サイドは3対2の数的優位がバルサ側に生まれ、デンべレはボールを受ければいつでも自分の好きな形でナチョとの1対1に持ち込むことができていた。するといくらナチョとはいえども、絶好調のデンべレとの1対1ではさすがに分が悪かった。内へ縦へと揺さぶられ、いつスピードを上げて突破を図っているのか、どのタイミングでどちらの足でクロスを上げようとしているのかが全く読めていないという印象を受けた。
この形の典型的な例がまさに1点目である。前半5分にナチョはデンべレに内側への侵入を許してしまった。これでナチョには内側への突破の警戒を生むことができた。ゴールシーンでは、内と縦の両方へ行けるようなそぶりを見せながら、タイミングを見て一気に縦へスピードアップ。これでナチョを振り切ってクロス。オーバメヤンが完璧に合わせて1点目を生み出した。
決定機につなげるハイプレス
実はと言えば、シャビ体制になってハイプレスはかなり洗練されたものへと毎試合進化しているのだが、クラシコを通して証明されたことはマドリーレベルの相手にも通用するということだ。
マドリーの選手たちのワンタッチプレーによってハイプレスの全部が全部うまくいったというわけではないが、確実にマドリーのビルドアップを苦しめているという感触はあった。
スーペルコパでのクラシコでもバルサは前線から積極的にプレスをかけていたが、クロースとモドリッチをはじめとする選手たちにあっさりとかわされていた。そのころと比べると精度も強度も上がっている。
特に、前回対戦との大きな違いはオーバメヤンの有無。オーバメヤンは本当にファーストディフェンダーとして優秀すぎる。常に背中でパスコースを切りながらのプレスを意識し、持ち前のスプリント力でボールを追い回す追い回す。これは相手チームにとってはかなりの脅威だろう。
スーペルコパでのクラシコを振り返りたい方はぜひこちらから。
それでは、今回のバルサのハイプレスのシーンを切り取って振り返ってみる。
こんなの作ってみました。こういうのがあった方が分かりやすいのかな?ぜひ、ご感想をお聞かせください。
前回対戦ではモドリッチに見事なまでにプレス回避をされ、後手を踏む展開に苦しめられていたが、今回の対戦ではフェランが背中でバルベルデへのパスコースを切りながらボールホルダーであるカルバハルにプレスをかけ、残りの選手は担当する選手を捕まえながらカルバハルのプレースペースを狭くするようにサイドへの圧縮を行った。
カルバハルはたまらず蹴りだし、ブスケツがボールを回収。
1点目は組織としてのハイプレスとまではいかなかったが、ぺドリの休む暇を与えないような追い回しからバルサがボールを回収してからのデンべレへの展開から生まれたゴールであった。
2点目はこのようなはめ込みからのボール回収からデンべレの仕掛けでCKを獲得したことで生まれた。
これらの得点シーンを見ればわかるように、今のバルサはハイプレス→ショートカウンターというようなボールを奪ってから直接的にゴールへと向かうような流れは作れていないものの、ハイプレス→ボール保持→フィニッシュまで着実に持っていく能力を身に着けてきたということができるだろう。それもマドリークラスのチームを相手にして。
前半終了!デンベレの縦突破、コーナーキックからの2得点で試合のペースを握りつつあるバルサ。構造的に現れる右サイドのデヨングのフリーの状況を活かしながらプレスを回避していく。ヴィニ対策のアラウホもバッチリ。
— くれた (@Cule_tactical) 2022年3月20日
後半は主導権を完全に握って点差を広げていきたい。
バルサ、現代版にアップデート
クーマン体制、シャビ体制初期と比べて質を大きく上げてきたのはハイプレス、すなわち守備戦術だけではない。バルサが進化したのはルイスエンリケ時代によく見られたスピーディーな攻撃だ。
事実、バルサはボールを保持しながらゆっくりと相手陣地へと前進してゴールを狙うチームの元祖というようなチームであるが、現代サッカーではこれだけじゃなかなか厳しいところがある。世界のトレンドはプレミアやバイエルンのような展開が目まぐるしく変わるダイナミックなサッカーに。
このような縦に早く、素早く相手ゴールへと向かうサッカーで活躍するのが新加入選手であるオーバメヤンとトラオレ、元から所属していたデンべレとデヨングだ。特にオーバメヤンは先述した通り、ファーストディフェンダーとしてもかなり優秀であり、クロスのターゲットとしても、長短に関わらずカウンター時には絶妙なタイミングで裏抜けを狙う。それ以外にもビルドアップにも参加をするといった万能型のFWだ。
デンべレは言わずもがなのスプリント力と突破力でバルサのカウンターの脅威を一気に大きくしている。デヨングは試合の中でビルドアップに多く関わる時期もあったが、直近の試合は昨シーズンのようなセカンドストライカーとしての役割を再び取り戻し始めている。カウンター時にオーバメヤンやデンべレといった選手たちへのスルーパスを狙いながら、自分の前にスペースがあれば果敢に飛び込んでいく。このはたらきはぺドリにもブスケツにも難しいタスクだろう。
デヨングは見違えるほどにフリーになるセンスを身に着けている。今日の試合はマドリー側の構造の問題はあったけど、フリーになる展開が多かった。
— くれた (@Cule_tactical) 2022年3月20日
絶対的エース、ベンゼマの不在
今回のクラシコでなによりも影響が大きかったのがベンゼマの不在だろう。なんてったって、アンチェロッティが大きく采配を変え、ミスを犯してしまったのもベンゼマの穴をどのようにして埋めるかという考えの末に陥ってしまったものであるからだ。
アンチェロッティの采配ミスによってマドリーは守備時に構造的な問題でデヨングにフリーな状況を与えてしまい、バルサの右サイド(マドリー側の左サイド)での数的優位の展開を作り出してしまった。
これまでのマドリーのバルサに対する守り方はスーペルコパでのクラシコと前半戦クラシコのマッチレビューを見ていただけると分かるのだが、前線からのハイプレスは行っていない。ある程度自陣までバルサを引き込んでからボール奪取→ヴィニシウスとベンゼマ+αで完結するロングカウンターという構図であった。
ベンゼマがいない攻撃面で必然的に仕事が多くなるのはヴィニシウス。しかし、シャビはヴィニシウスを完封するためにアラウホを起用。こうなるとマドリーは前線でボールを収める選手もいない、ヴィニシウスという大きな武器も封じられた、バルサにはハイプレスをかけられてクルトワが大きく蹴りだすしかないというかなり厳しい展開で苦しめられた。
一方のバルサ側は、ベンゼマがいてもチームとしての狙い、方針を大きく変えることはなかったが、仮にベンゼマが出場していたならばバルサも今回ほど強気にハイプレスをしかけることはなかったかもしれないし、マドリー側のボール保持の時間が長くなっていたかもしれない。
今回は以上です。いかがでしょうか?久しぶりのクラシコでの勝利はバルサの完全復活を意味していると言っても全くもって大げさではないと思います。どん底の状況から短期間でここまで持ち上げたシャビはさすがとしか言いようがありません。これからアンスも帰ってくるでしょうし、楽しみが増えますね。
今回はかなり気合をいれて書いたので、ぜひ拡散をよろしくお願いします!
では。